同じクラスだった子の名前は思い出せないのに、嫌なことをしてきた人の名前ってなぜかずっと覚えているということありませんか?
中学生の頃ヤンチャグループに属していた男子に嫌なことをされたことがありました。
美術の授業で描いた自分の絵を、私が席を外している間に教室の黒板の上に置かれたことがありました。
教室にはほとんどの生徒がいて、私とその男とのやりとりをほとんどの生徒が見ていました。
描いた絵は全員分掲示されるので、今思うとたいしたことではないですが、当時は自分の絵がクラス中に晒されたことが本当に泣きそうになるくらい悔しい出来事でした。
その一回の出来事以来、その男子とは話もしていないし、卒業してから一度も会っていません。(一生会いたくないです☺️)
人はたくさんの人と関わり、無数の出来事を経験しているはずなのに、なぜか「自分に嫌なことをしてきた人」の記憶だけは、いつまでも色濃く残っています。
テストで公式や英単語は覚えられないのに、嫌なことをしてきた男子の名前は何年経っても忘れられないんです。
感情と記憶は深く結びついている
私たちの記憶は、感情によって強化される仕組みになっているそうで・・・特に「怒り」「悲しみ」「恐怖」といったネガティブな感情は、脳の扁桃体(へんとうたい)という部分を強く刺激します。
この扁桃体は、記憶を司る海馬と密接に連携していて、「これは危険だった」「これは忘れてはいけない」と判断した体験を、強く記憶に残そうとするそうです。
つまり、嫌なことをされた記憶=脳にとっての“警告”や“学び”。
同じことが繰り返されないように、無意識にその記憶を保存してしまうということです。
❷ ポジティブよりネガティブのほうが記憶に残る理由
心理学では「ネガティビティ・バイアス(negativity bias)」という現象が知られています。これは、ポジティブな出来事よりもネガティブな出来事のほうが心に強く、長く残るという傾向のこと。
たとえば、
- 10人に褒められても、1人に批判されたことが忘れられない
- どれだけ楽しい時間があっても、最後に嫌なことがあると全てが台無しに感じる
こういった感覚も、ネガティビティ・バイアスが関係しています。
脳にとって「生き延びる」ことが最優先だからこそ、危険や痛み、不快な経験に対して敏感に反応するようにできているんです・・・
❸ 忘れたいのに思い出してしまうのはなぜ?
「もう気にしたくない」「忘れたい」と思っているのに、なぜか寝る前や静かな時間にふと思い出してしまう…
これは、「抑えようとすればするほど意識してしまう」という皮肉な効果(アイロニック・プロセス)」が原因です。人は「考えまい」と意識すればするほど、その対象を心の中で強調してしまう傾向があり、
さらに、嫌な記憶は“未解決な問題”として脳に残ることも多く、心のどこかで「納得していない」「消化できていない」と感じていると、何度も再生されるように思い出されるのです。
❹ 忘れられないなら、どう向き合う?
嫌な人の記憶を完全に消すことは難しい。でも、それをどう受け止めるかは、自分で選ぶことができます。
- 「これは私が強くなった証」と捉える
- 「同じことをしないようにしよう」と反面教師にする
- 逆に、「あの経験があったから、今の自分がある」と前向きに変換する
記憶そのものは消えなくても、記憶の意味を変えることはできる。
そしてその時、記憶は自分自身を苦しめる“過去”ではなく、支えてくれる“経験”に変わっていくのかもしれません。。。
おわり
傷ついたことを忘れずにいるのは、次に傷つかないための防御。
忘れられない出来事があるのは、それだけ一生懸命に生きてきた証。
そう考えると、苦手な人のことも少しだけへっちゃらになれるかも。